Dream job story1
自分がどう生きたいか、どう働きたいのか!? そこには決まった答えがあるわけでもないし、理論的に説明できるわけでもない。一人でも多くの実体験ストーリーが心に響くに違いない。そこで実体験者に話を伺いました。
ジャズとの出会いから人生が変わった!
趣味から全てがうまく回り出した
(学校教諭&ジャズボーカリスト 江畑理恵さん)
今回は音楽教諭と同時にプライベートでも音楽活動を続ける江畑理恵さんとの対談です。
私には音楽しかない!
その出会いと変わるきっかけ
古川:江畑さんは小学校教員でしたよね?
江畑:そうです。今は、小学校で音楽専門の教員をやりながら、空いた時間を使って仲間とジャズバンドの活動をしたり、ギタリストの人とデュオを組んだりしています。
古川:小学校の音楽の先生をやりながら、音楽活動をやってるわけですね。
江畑:もちろん仕事が忙しくて音楽活動できない時もあるけど、バランスを取りながら楽しくやってます。仕事である音楽の先生とプライベートで歌っていること。この両方は、どちらもいいように作用している気がします。
古川:それぞれが独立した活動というよりは、一つの共通したものなんですね。
江畑:昔は学校の先生と歌を歌うことは分けて考えていて、両立しなきゃいけないと肩に力が入っていたのですが、それがなくなって気持ちが軽くなりました。
古川:音楽が根っこにあるということですか?
江畑:自己欲求を実現するにあたり、音楽は私にとって“最高の手段”です。先週デュオライブがあったんですが、昨年末にプライベートなことで少し気持ちが落ちてて、うまく歌えるかなって不安だったんですね。割と自信がないまま当日を迎えてしまったんですが、お客さんが思った以上に来てくださったんです。どんな人が来てくれたのかを考えた時に、それを見ていたら、勇気が湧いてきて、いつも以上にうまく歌えたんですよね。私は色んな人と出会ってその人たちに何かを与えて、その上で自分もパワーをもらっていきたいんです。もちろん歌が好きというのは大前提です。それは仕事と歌うこと、どっちもパワーの源になっていて、心地よいということにその時初めて気づいたんです(笑)。単に歌の技術を上げたいわけではないんですよね。
古川:エネルギー効果の媒介として音楽活動がそこにあるんですね。
江畑:歌がエネルギーそのものって感じです。元々エネルギーを溜め込んでおくのが嫌いな性格なので、歌うことが自分にはあってるのかな。
古川:江畑さんの歌を聴いて、パワーをもらえる人がいっぱいいるんでしょうね。私も変わっていこう、なんかやってみようって、その人の人生に影響を与えていくんですね。
江畑:そうなれば嬉しいです。
古川:ジャズは具体的にどういった活動をしてるんですか?
江畑:2012年の3月に入会したジャズサークル内で結成したバンドがメインでもう2年くらい続いてます。JSMっていう名前なんですけど、二ヶ月に一回くらいの割合でジャズフェスティバルに出たり、他のバンドと対バンしたり、JSMでワンマンライブしたり、あとは個人でのソロ活動とギター&ボーカルのデュオの活動です。ソロプロジェクトは、名字である江畑からとってEVA(エヴァ)って名乗ってます。年一回のライブを目標に頑張ってますよ。
古川:デュオとしての活動、個人としてのソロ活動、JSMとしてのバンド……結構忙しいんじゃないですか?
江畑:そうですね。ライブをただやればいいってわけじゃないし、練習はもちろん、練習場所の確保や日程の調整、告知などの宣伝活動、ライブまでにやるべきことはいっぱいあります。歌うことよりそっちの方が大変で、そういったプロデュース能力も必要になってくる。あとはステージでどうやって演奏するかといった見せ方を考えることも重要。毎回が勝負なので、気が抜けません!
古川:江畑さんに初めてお会いした5年前とは、ライフスタイルがだいぶ変わった気がします。
江畑:当時はまだジャズに出会ってなくて、モヤモヤした気持ちを抱えて日々過ごしてましたね。古川さんのセミナーには、「私が今抱えている苦しい何かを聞いてくれる人かもしれない」という気持ちでセミナーに参加しました。古川さんに私が考えていることを洗いざらい吐き出しちゃいましたね。今考えると恥ずかしいです…(笑)。
古川:よく覚えてますよ。最初にお会いした時は、まさに閉塞感の真っ最中って感じでした。すごくエネルギーがある方だなとは思ったけど、全部自分で扉を塞いでしまって、どこに発揮していいかよくわからず、一人で考え込んでいた感じだったと思います。
江畑:自分のやりたいことが本当にわからなくて、この閉塞感のスパイラルをどうにかしたいと思って本屋さんをうろうろしている時に『やりたいことが見つかる3つの習慣』という本の背表紙が目に飛び込んできて、「おっ、この本いいかも!?」と思ったので、とにかく買って一気に読んで、すぐ古川さんに電話したんです。そしたら古川さんが「一度セミナーに来ませんか?」って誘ってくれたんですよね。「じゃ、行くしかないな」って(笑)。
古川:その時の江畑さんと似たような状況の人っていっぱいいると思うんですよね。江畑さんはどうやってその閉塞感から抜け出していったんですか?
江畑:まずは古川さんの本に書いてあった“欲求”という部分を探ってみました。私はどういったことに楽しいと感じるのか?といったことを書き出してみたんです。自分の人生を振り返った時に、表現することが好きなんだと早い段階で気づいたんです。
古川:なるほど! 江畑さんのワクワクする欲求は“表現すること”だということですね。
江畑:“表現する”というキーワードは早い段階で出てきたんですけど、そのキーワードと歌はまだ結びつかないんですよ。とりあえず何か好きなことをやってみようと考えた時に自分がやりたいと思っていてできなかったことは、歌うことかなって思ったんです。中学生の頃に、自分の10年後くらいの将来を書きなさいという作文があって、私はバンドのボーカルをやりたいって書いたんですよね。でもその頃は地味だったし、そんなタイプじゃなかった。歌を歌う人はスター性があって華がある人じゃなきゃダメって思い込みがあったので……。もしかしたらそれが心残りなのかなって思ったんです。
古川:まずはやりたいことのワークで“歌う”ということがなんとなく出てきたわけですね。
江畑:ふと思い立ってYAHOOで「ボーカル、ジャズ、住んでる街」で検索したら、チェーン店のボーカルスクールが検索結果に出てきたんですよ。それで、気楽な気持ちでちょっと行ってみたら、そこで仲間ができたんですよね。
古川:好きなことをやってみようと具体的に踏み出した瞬間ですよね。ヤフーで検索をした行為が扉を開けた瞬間です(笑)。
江畑:あとは音楽サークルに初めて行った時の体験が強烈でした。ボーカルスクールの検索結果の次点に、住んでいる場所の音楽サークルが出てきたんです。このHPは2007年くらいから更新されてなくて、まだ存在してんのかなって思ったんですけど、メッセージを送ってみたんですね(笑)。そうしたらすぐ返事が来て、家からちょうど3分くらいのところの音楽スタジオで毎月一回やっているって言われてびっくり! 「しかも数日後にやりますよ」って。
古川:そのサークルでいきなり歌ったんですか?
江畑:そうです。いきなり歌うんですよ。小さいスタジオに20人くらい色々な楽器の人がいて、みんな無表情でよくわからない圧迫感がありました。だから私も緊張したし、場違いなとこに来てしまったなぁと思っていたら、「今日初めて来てくださった江畑さんです」って紹介されて……マイク持つのを忘れて歌い出しましたからね(笑)。
古川:よく歌いましたね(笑)。
江畑:カラオケはそこそこ上手だから大丈夫だろうと思っていたんです。行く前にこの楽譜を元にこのスタイルで歌おうってあらかじめ決めていたけど、いざ始まると生演奏だから勝手がわからないし、マイクなしで歌い出しちゃうし……。曲が終わった後はもう逃げ出したい気持ちでいっぱいでしたね。最近当時のことを聞いたら、「マジ勘弁してくれ!」って思ったって(笑)。
古川:ジャズに出会って運命だ!ってより、むしろ失敗したって気持ちの方が強かったんですね?
江畑:そうです。ただちょっと楽しかったんですよ。
古川:最初は落ち込むような状況になったけど、内発的な自分のスイートスポットに強烈に触れたから楽しかったんでしょうね。
江畑:失敗した!が98%くらいありましたけどね(笑)。残り2%の楽しいって気持ちを大切にしようと思いました。
古川:そこで辞めちゃうこともできる訳ですけど、2回目に進むきっかけは?
江畑:古川さんに“フィードバックの心得”を解かれたことが大きかったです。「失敗したと思っても良かったことが絶対あるはずだ」って言われたから、「2回目ありますよ」って連絡もらった時にとりあえず行ったんです。そうしたら前よりは多少良くなっていて、1回目よりも楽しかった。だんだん打ち解けてくると、それぞれの環境の中でみんな音楽を楽しんでいるんだなっていうのがわかってきて余計ハマっていきましたね。主催者の方とウマがあったのも大きかったです。その方は私よりも年下の女性ですが、今となっては親友です。
仕事とプライベートは
完全に別物だと思ってた!?
古川:ご縁が広がって、音楽活動が広がっていく訳ですね。お仕事の方はどうしてたんですか?
江畑:仕事は楽しくなかったです(笑)。仕事で自分のやりたいことをやるのはわがままだと思っていたんです。でもあるとき、人数が足りなくて、歌の指揮を振る機会があったんですよね。それをきっかけに、担任を持たずに音楽専科でやりたいって話をして、今の学校に異動したんです。
古川:環境を変えられたんですね?
江畑:今の学校は2年目です。でも異動させてもらって良かったなと思ってます。音楽を教えることだけに専任するのは逃げなんじゃないかって思い込ませていたけど、そうじゃなかった。自分で考えて色々なことができるし、子供たちもすごく喜んでくれる。自分が企画を立てると手を貸してくれる理解のある同僚や上司もいます。何より子供が音楽を好きになったって言ってくれるのが嬉しいです。前の学校にいた時と忙しさは変わらないんですけどね!(笑)
古川:音楽を通じてできることは多いという訳ですね。
江畑:音楽を通した様々な活動を経験させることで、引っ込み思案だった子どもが、積極的になったりするんですよ。
古川:音楽専科という道を踏み出して、それを通じて子供が変わっていくプロセスを味わった時に天職という気持ちを感じたんでしょうか?
江畑:確実に言えるのは、学校を移って良くなったんじゃなくて、自分の内面が変わったからだと思います。今は毎日忙しいけど「ありがたいと思う」気持ちを大事にしています。
古川:あの頃に感じていた閉塞感を一歩一歩打ち破って来られましたよね。学校の先生とジャズボーカリスト。この別々に区分されていた二つの自己欲求が融合して、今では人を通じて何かを変えていく原動力にまでなっているのは素敵なことだなと思います。江畑さんのように行動を始めて、その結果が連鎖反応していくためには、まさに動かないと始まらないということに尽きると思うんです。人との出会いは大切ですね。
江畑:私には特別なエネルギーがあると感じる人がいるならそれは大きな勘違いだってことは声を大にして言わせてください。「まず始めてみる、とにかく動く」といったことは、絶対誰にでもできるし、すごく大事だと思いますよ。
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音楽教諭/ジャズボーカリスト 江畑理恵